国際大会が行われるプールの水温は低めに設定してある
プールの水温には適温があるのでしょうか?
公益社団法人日本プールアメニティ協会のホームページに以下の文言がありました。
プールの水温は22℃以上が目安ですが、遊泳に適する水温は26℃~31℃です。気温は水温より高めで風がないことが理想的です。室内プールでは29~31℃が適温です。
出典:公益社団法人日本プールアメニティ協会
ということです。
ここではオリンピックの水泳を取り上げますので、室内に絞ってみます。
ではその場合、29℃〜31℃か?と言えばそれは違います。
基準が決まっており、25℃~28℃となっています。
一般的な室内プールに比べ3℃〜5℃くらい低い温度ですね!
これはズバリ、パフォーマンスが高まる水温なんです。
オリンピックや世界水泳などの国際大会ではこの温度になるように厳格な管理がされています。
この温度の根拠として、長崎大学が行った『水温、泳速度が発汗量および体温変化に及ぼす影響』という研究があります。
この研究では、水温2種類(26.4°C , 29.2°C)、泳速3種類(被験者の1,500m自由形ベスト記録の90%, 95%, 97.5%の泳速度)の条件で発汗量、体温変化が起こるかを見ています。
その結果を簡単にまとめると以下のようになります。
これによると、水温が高くても体温変化には違いが見られなかった(有意にならなかった)とのこと。しかし、その他の部分では全て有意となったそうです。
基本的に、レース本番であれば泳速度は速いでしょうから、選手の体温は上がりやすいはずです。
すると、当然汗の量は増えていきます。
汗をかくには多くの水分やエネルギーが必要であり、これはパフォーマンスの低下に繋がります。
また、水中であっても熱中症のリスクが高まってきます。
そのため、それらを加味して、水温は低め(25℃~28℃)となっているんですね。
だからこそ高パフォーマンスを発揮しやすいのです。
以前、このブログの記事で、マラソンは冬のような寒い時期の方が有利だとご紹介しました。
やはりそれは水泳でも同じことが言えるのでしょう。
では、さらに水温が低い場合(25℃未満)はどうでしょうか?もっと有利に働くのでしょうか?
これは基本的に不利になります。
低すぎると体温低下の割合が大きくなり、寒さから体が動かなくなります。
特に22℃以下になると急激に体温が落ちると言われています。
それゆえに、水温の下限は少し余裕を持って25℃となっているのでしょう。
もしかすれば、選手によって水温が22℃~24℃の時に最も良いパフォーマンスを得られるかもしれません。しかし、それはごく稀かと思われます。
というのも、スイマーの聖地と言われてきた東京辰巳国際水泳場の水温は27~28℃だそうで、基準の中では少し高めです。
それでも、過去の国際大会では次々と新記録、高記録が生まれてきました。
したがって基準値の中であれば、さほど影響はないのかもしれません。
あとは選手の特性にもよるでしょう。
つまり、水温が高めの方が得意な選手、逆に低めの方が得意という選手もいるということです。
ただ、これに関しても、あくまで+αの要素です。
なんと言っても、最も大事なのは普段の練習ですからね。
いくら自分にあった水温だとしても、技量や体力がなければ結局良い成績は残せません。
普段の練習の成果+水温などの条件が揃って、初めて素晴らしいタイムに繋がりますよね!
よって、基本的に水温が低すぎる場合には、体が硬くなってしまい、パフォーマンスの低下に繋がることの方が多いのです。
【まとめ】
・水泳選手のパフォーマンスを高めるために水温は25℃~28℃になっている
・これより高いとパフォーマンスの低下、熱中症のリスクが出てくる
・逆に低い場合は、体が固まってしまい、これもパフォーマンスの低下に繋がる
水泳に関しては、水温がかなり重要ということがお分かりいただけたかと思います。それを管理している方たちにも感謝したくなりますね!
今日は日本のお家芸の1つ“水泳”について!
その中でも今回は”水温とパフォーマンスの関係性”を掘り下げてみます!